1回目「愚者」、2回目「魔術師」、3回目「女司祭」、4回目「女帝」、5回目「皇帝」、6回目「教皇/司祭」、7回目「恋人たち」
8回目は「戦車」
今回は、15世紀からのタロットの歴史を追いながら、初期のタロットに描かれたもの、その後のタロティストが付け加えたもの、生命の木と結びついてから描かれたもの、変遷をみていきました。
まずはマルセイユ版

「戦車」というタイトルだけど、乗ってる人は武器を持ってないですね。兜じゃなくて冠?かぶってますし。これは、今から戦いに行く戦車じゃなくて凱旋車、勝って帰ってきた「英雄」がパレードしてる姿。
これ、勝利したときだけじゃなくて、戦いがない時にもお祭り的に行われていたそうです。日本で山車の行列が練り歩くようなもの?
この凱旋車たちの元となったのがペトラルカの詩「トリオンフィ(勝利・凱旋)」。詩が擬人化されたものが乗っていて、詩の順番で、あとからくるものが勝っていくシークエンス(クピド→死神→名誉→時、どんなに愛し合っても死が二人を分つ、死んでも名声は残る、でも永遠には勝てない、とかだったかな、うろ覚えです)
カードゲームで相手より強いカードを出して勝っていくのにも似てる。トリオンフィ=トランプ、元々ゲーム用だったタロットの遊び方のようでもあるし、パレードに登場する擬人像が今の大アルカナの由来でもあり、元の詩を読んでみたいです。
昔の「戦車」の図像は伊泉先生のご著書『タロット大全―歴史から図像まで』図105、109口絵、ちらっとお話があったプラトンの二頭の馬車についてはp.479.~や、『リーディング・ザ・タロット -大アルカナの実践とマルセイユ・タロットのイコノグラフィー-』p.222.〜もご参照ください
このあと、ウェイト版やトート・タロットができる前に、18世紀末のフランスで動きがありました。神秘のエジプトブームから「タロットの起源はエジプトだ!」説が発生。商才ある占い師エテイヤがエジプト風デザインのタロットをつくり、史上初のタロット占い本を書いて大ヒット!

(エテイヤのタロットの復刻版、下の本『アイコニック・タロット イタリア・ルネサンスの寓意画から現代のタロット・アートの世界まで』にも載ってます)

19世紀の偉大なるオカルティスト:エリファス・レヴィもエテイヤの本を読んだんですね。はじめはエテイヤをリスペクトしてものの、いや違う、タロットはカバラと関連してるんだ!とレヴィは考えた。タロットが生命の木と結びついた始まり。
エテイヤをディスりながらエジプト・テイストを残したのが謎なんですけど、レヴィが描いた「戦車」はスフィンクスがひいている(下図)。

その後に作られたウェイト版はレヴィ版にそっくり

エリファス・レヴィ・チルドレンというのかフォロワーというのか、ウェイトはレヴィの伝統を継いでいる。
肩にあるウリムとトンミム、戦車の前面のシンボル、これらについてはウェイトが説明していないからわからない。だけどスフィンクスは理由があって残したと書いている。
生命の木で「戦車」が対応するのはセフィラー3と5の間。

生命の木の、向かって左の柱をあがっていって、スフィンクスの問いに「精神の力」で勝利した!(セフィラー8は思考、5は意志)。だからスフィンクスを乗りこなしてるような絵?
でも3は制限、これ以上はあがれないのでした。足が埋まってるかのような戦車の人は天上へ飛んでいけない。地上に限るのを表すために背景に街を書き加えたんですかね(マルセイユ版にもレヴィ版にもない)。
戦車の人はセフィラー1ケテルにつながる「女司祭」のTORAは開けない、スピリチュアリティとは関係ないといいます。
なんで急に「女司祭」がでてくるの?
- 「戦車」のパスの占星術対応は「蟹座」
- 「蟹座」のルーラーは「月」
- 「月」が対応するパスは「女司祭」
だから関連すると言いたいみたいですが、「それなら他のカードでもやれよ」て伊泉先生のツッコミにうんうん頷きましたよ。ぜんぶのカードに占星術やヘブライ文字のシンボルを描いてくれれば、生命の木を絵にしたとわかりやすいのにね。
「運命の車輪」にもスフィンクスがいます。

「戦車」と関係あり?イエス
- 「運命の車輪」のパスの占星術対応は「木星」
- 「木星」は「蟹座」(戦車)でエグザルテーションする
占星術のディグニティを知ってればわかる話ではありますが、ややこしいっちゃややこしいですね。
伊泉先生の翻訳書『生命の木―ゴールデン・ドーンの伝統の中のカバラ』のグリアさんは「司祭」(牡牛座)のパスのところで、占星術ルールによる関連づけをされてます。「牡牛座」のルーラー「金星」と右の柱の関連、「牡牛座」で「月」がエグザルテーションするとこから「女司祭」や「戦車」との関連とか
さてトート・タロットは?
クロウリーも、ウェイトと同じく蟹座ー月ー木星のつながりを書いてます。「戦車」以外でも占星術をたくさん取り入れてますもんね。
そしてまさかのウェイトと同じモチーフを使っている!スフィンクスもそうだし(四頭にしてるけど)、ブルーの天蓋も(めずらしくウェイトに対抗してないカード?!)
蟹座の描き方にはオリジナリティがありますね。カニを頭にのせて、甲羅のような鎧で全身を覆って。
あと色のチョイスが占星術由来なのもトートの特徴でしょうか。鎧の色は蟹座から、御者が持つ聖杯は木星から、車輪の色は火星から(最後のは『トートの書』には書かれてないですが)。
余談
うちの最寄りの本屋、エリファス・レヴィの本おいてるんですよねー

ずっと売れ残ってるのか、それともよく売れるのか?笑 本の中身、チラ見してみましたけど、私にはちんぷんかんぷんでした。
以前の生命の木講座での「戦車」とパス18のレポもつけておきます。
次回は6/19「力」です。
マルセイユ版だと次は「正義」、トートも天秤持った「調整」ですが、この講座はウェイト版の順で進めるそうです。

講師:伊泉龍一先生
Zoom開催スケジュール
次回6/19「力」、以降7/3、7/17、8/7、8/21、9/4、9/18、10/2、10/16、11/6、11/20、12/4、12/18
各回:20時〜21時(1時間)
★リアルタイムでなくてもアーカイブでもご受講いただけます
受講料1回¥3,300
詳細・お申し込みはこちらから
https://thelema-s.com/online240221.html
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