【恋人たち】レポ「ウェイト版」と「トート・タロット」と「マルセイユ版」の絵を比較しながら学ぶカードの意味7回目2024/5/22

1回目「愚者」2回目「魔術師」3回目「女司祭」4回目「女帝」5回目「皇帝」6回目「教皇/司祭」

7回目「恋人たち」は3種のタロットで絵がぜんぜん違います。モチーフ自体が別のものに変わってるから、占いで使う場合のメッセージもそれぞれ違ってくるし、解説が盛りだくさん。時間延長してお話いただきました。

いずれにしても「恋人」だから「恋がうまくいく」ってカードではないってこと。

でもマルセイユ版には愛の神クピドがいるじゃない?矢が刺さったら恋に落ちるのでは?

そう、矢が刺されば心が決まる。でもクピドの矢はテキトウに放たれるから、好きな人と思い合えるかは別。好きじゃない人に好かれ、好きな人には好かれない、叶わない恋に泣きぬれるケースだってあるでしょう。

どうにもできないことを神の仕業にしておいた昔の人、うまい。

じゃあこの絵で矢を打たれそうな位置にいる3人はどういう関係なんでしょうか。諸説あり、なので『リーディング・ザ・タロット』p.210〜220.をご参照ください。

その中の一説、「分かれ道のヘラクレス」だと

Niccolò Soggi  ercole al bivio 16世紀 Wikimedia Commonsから

地味な女性と美しい女性、両方からひっぱられてる。一人は「苦難と栄光の道」、もう一人は「快楽の道」を示し、ヘラクレスは最終的に厳しい方を選んで英雄になる。あれ?自分の意志で選べるなら、気まぐれなクピドは関係なくなっちゃう。

ほかに、母親と若い女性の間で迷ってる男性という説もあり。これを、恋に目覚め、親離れしていく若者を示している、と発達心理学風の解釈もできる。

大アルカナ22枚を人間の成長段階としてみるタロット本は、アルフレッド・ダグラスの『タロット』がおすすめされてました(だいぶ前に読んでわかりやすかった印象。もう手元になくて中身を見られないんですけど、Amazonでお安く中古がでてます)

恋に、ではないけど「目覚める」のがウェイト版。

アダムとイヴの物語ーイヴがヘビに誘惑されて禁断の実を食べてしまった、怒った神に楽園を追放された、イブのせいでそのあと生まれるすべての人間が罪を背負わされた。

このまま占いに使ったら「女は悪いから気をつけろ」???

ではなくて、彼らが知恵の実を食べて目覚めたところに注目です。実を食べて初めて二人は裸でいることに気がついた。それまで無知だったけど、知識がついた。

何も知らずにぬくぬく生きていくのか、目覚めて主体的に生きていくのか。ウェイトは後者を意図してたようです。

しかし楽園を出ていくともう二度と戻れない、切り離される。「恋人たち」が対応する生命の木のパスのヘブライ文字は「剣」、ウェイト版には描かれてませんが、トート・タロットにはたくさんの剣が描き込まれてます。

分離の道具「剣」のアーチの下、結婚が行われてる様子。王と王女の結婚は、相反するものを混ぜ合わせて統合する錬金術のモチーフ(錬金術については14番のアート(節制)カードで補われるそうです)

神秘の結婚を取り仕切ってるかのような中央の大きな人物は?

ウェイト版の「隠者」ですけども

これは「隠者」の別の姿だとか。なんでここで隠者?占星術つながりでした。

  • 「隠者」に対応するのは「乙女座」でルーラーは「水星」
  • 「恋人たち」に対応するのは「双子座」でルーラーは「水星」

「魔術師」の中央にいる水星の神メルクリウス(ヘルメス)を「恋人たち」「隠者」にも描き分けてるということ。「恋人たち」にふんだんに取り入れられてる錬金術=ヘルメスの術だから、何重にもメルクリウスを重ねたい?双子座をあらわすツインズよりも隠者が大きく描かれてますね。

「恋人たち」「隠者」、両方に宇宙卵も描かれてます。「魔術師」だとヘルメスの杖に蛇がいる。これも水星関係の3枚につながりを持たせてるのか。

そしてウェイトと同じく創世記の物語もちらり。クロウリーのほうが男性中心主義を批判してたからでしょうか、イブだけじゃなく、リリスまで登場させています(逆にアダムはいない)。

『リリス』(ジョン・コリア/作、1892年)

アダムの最初の妻とされるリリスは対等を求めた。気に食わないアダムがリリスを追い出した。そのあとイヴが作られた(強い女はさっさと出てくのおもしろい)

上の絵だとリリスは蛇と仲良しみたい。キリスト教で蛇は悪魔よばわりされるようですが(イヴを誘惑したから)、ウェイトの考え(グノーシス主義)では蛇は悪者じゃない。目覚めと知識を促したのだから。

そこでウェイトは「ここにクピドは合わない」と天使に変えた。無責任に矢を放つクピドは知性と無縁ですもんね。

なのに、クロウリーはまたクピドをもってきてる(ウェイトの逆張りが好きすぎるでしょ)。でもマルセイユ版とは違う意味なのでした。

トート・タロットのクピドが放つ矢は心が決まる矢じゃない、クロウリーの教えに目覚める矢なんですと。イヴに知恵の実をすすめた蛇と似た役割のクピド。

毎度、トート・タロットは絵に描きこまれてるものが大量です。トートを占いに使うとしたら、これらをどうメッセージにするのか相当むずかしそう、、

占いに使うにはマルセイユ版がシンプルですきかも。わかりやすい教訓というか人生観というか、背景知識がなくてもストンときやすいから。好みですけどね。

次回の「戦車」はこんなに盛りだくさんにはならないようです。またお待ちしてます。

以前の生命の木講座での「恋人たち」レポ

次回は6/5「戦車」です。

伊泉龍一先生のタロット講座「ウェイト版」と「トート・タロット」と「マルセイユ版」の絵を比較しながら学ぶカードの意味

講師:伊泉龍一先生

Zoom開催スケジュール

次回6/5「戦車」、以降6/19、7/3、7/17、8/7、8/21、9/4、9/18、10/2、10/16、11/6、11/20、12/4、12/18

各回:20時〜21時(1時間)

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