【女帝】レポ「ウェイト版」と「トート・タロット」と「マルセイユ版」の絵を比較しながら学ぶカードの意味4回目2024/4/10

1回目「愚者」2回目「魔術師」3回目「女司祭」

今回の「女帝」は3種のタロットの絵の違いをじっくりと。ギリシャ神話もいくつか登場。

今回もマルセイユ版はシンプルです。

神聖ローマ帝国の権力の象徴、帝冠、鷲の紋章、帝国宝珠(球体の上に十字)、次の「皇帝」にも同じのが描かれていて

この2枚をペアにするのは自然に思えますが、意外と最近、20世紀後半のユング派から始まったのだとか。

紹介されたサリー・ニコルズの本「ユングとタロット:元型の旅」で対として書かれたのが最初?ユング派ですから「女帝」「皇帝」を母性と父性の元型的イメージとしたそうです。

タロットを学び始めた頃に伊泉先生の「タロット大全」を読んで、そこに載っていたこの本「ユングとタロット:元型の旅」を読みました。マルセイユ版の本は少ないから貴重だと思って。ユング心理学でいう「個性化」をたどる道程を、大アルカナと重ねて解説しています。マルセイユ版を使った理由は「作者が不明で決まった解説書がないから」で、自由に連想できたみたい。一枚一枚のカードについて、元型をはじめ、夢分析やタイプ論などなど、とめどなく広がり過ぎてポイントが分かりにくくなるところもありますが、他にはない考え方が面白かった記憶。

ユング派が母性を言い出すよりもっと前に完成しているウェイト版にも母性が見えます。妊婦服をお召しの「女帝」。

権力者にしてはずいぶんリラックスしてるというか、柔らかなイメージに変わっていますね。

鷲(家父長制の最たるゼウス神のアトリビュート)が金星&ハートに変わって、フェミニンになっている。

それもそのはず、この絵は実際の権力者たる女帝ではなくて、ギリシャ神話のデメテル女神なんですね。穀物の女神だから小麦が実り、一人娘の因縁の食べ物(ザクロ)が服の模様に。

手に持つ笏?もデメテル由来だそうですが、私の検索力ではこれを持ってる絵などを見つけられてません。下のような麦穂か鎌か松明しか。

豊穣の女神ケレスの小麦、ライ麦、大麦 (テンペスト) [ウォルター・クレイン, シェイクスピアの花園より]
アントワーヌ・ヴァトー『ケレス』(1717年と1718年の間)
アントワーヌ=フランソワ・カレ『ゼウスに抗議するデーメーテール』1777年

上の絵は、娘が冥王ハデスにさらわれた怒りを最高神ゼウスにぶつけてます。「娘を返さないなら穀物を実らせないよ」「じゃあ返すよ」ってゼウスも根負け、でも娘ちゃんはすでに冥界の食べ物を口にしてしまってたから、掟によって全面的には地上に戻れず、一年の1/3は地下で過ごさなくてはならない。

この神話が表すのは、一年の中には植物がない冬があるという自然のサイクル。春に芽吹き、夏に花咲き、秋に実りが、冬には枯れて地に還る、占星術の12星座のサイクルみたいにも思います。

ウェイト版「女帝」の冠(12星座を表す12の星)は生命の木のセフィラー2(恒星天)との関連からだけど、デメテル神話の季節の巡りも12星座に重ねたくなります。


プトレマイオスの体系に基づく天球。地球の回りに透明な物質でできた惑星と太陽の天球があり、恒星天の外側は神と神の選民の住まいとされた。天球は長い間実体をもつものとして扱われた。(ペトルス・アピアヌスCosmographia, 1539年)

トート・タロットだと12サインは「女帝」の腰に描かれてます。でもトートの「女帝」はデメテルじゃなくてエジプトのイシス。手に持つハスがそう示しているとのこと。

また「女帝」の手のポーズは錬金術のシンボル、「皇帝」にも別の錬金術シンボルがあてがわれていて、いっしょになって初めて活性化されるということ。ここでも「女帝」「皇帝」がペアで働くのか。

生命の木で「女帝」のパスには金星、「皇帝」のパスには牡羊座→牡羊座のルーラーは火星。金星火星の名の元になった神VenusとMarsも有名なペアです。だけど夫婦じゃなくて愛人関係、キリスト教ならありえない神話ですね。

下のヴィーナスは息子キューピッドと(トートにも描かれてる)鳩とともに、浮気相手を待ってるのかしらんね。右端にちらっと現れてるのがマルスっぽいですが。

ランベルト・スストリス『ヴィーナスとキューピッド』(1554年頃)

ギリシャ神話には道徳や倫理に反する物語がいっぱいあります。そういうのが不快な人にはトート・タロットよりもウェイト版のがいいかも。カトリックだったウェイトとキリスト教を捨てたクロウリーでは、目指すところが全然ちがってるから…

神に救ってもらうつもりはないから良い子でいようとしない、迷える子羊じゃない、自分のことは自分で救うんだ!こういうクロウリーの新しいスピリチュアリティがお好きならトートはいいかも(この考えがウケた60〜70年代ニューエイジから何十年も経った今、自由より規範に従う方向のが強くなってる気はしますが)

生命の木では「女帝」のパスは新しいものを生み出そうとするところ。

ふだんは意識しないけど、自分でも何かやってみたいな、作り出してみたいってときに触れるパスだそうです。

マズローの欲求階層

住むところも食べ物にも困らず、人間関係も居場所もあるなら、まずまず幸せでしょうし、マズローの欲求段階の半分は達成してます。でもそれ以上の何か、自己実現したいって思うなら、生命の木を上に向かうんでしょうねぇ。

あるいはパターン化された生き方がうまくできない、みんなのようにできないと悩む人が、自分なりの固有の生き方を作ろうと上に向かうか。

タロット「女帝」は”自然にまかせて待つ”イメージだったけど、トート・タロットや生命の木のパスからすると、自分でクリエイトしていくのも大事になるの?もうちょっと考えてみようと思います。

女帝のパス、以前の講座ではこんなのでした。あと占星術講座の小惑星ケレス回(ケレス=デメテル)もご参考までに

次回は「女帝」とペアになる「皇帝」です。

伊泉龍一先生のタロット講座「ウェイト版」と「トート・タロット」と「マルセイユ版」の絵を比較しながら学ぶカードの意味

講師:伊泉龍一先生

Zoom開催スケジュール

次回4/24「皇帝」、以降5/8、5/22、6/5、6/19、7/3、7/17、8/7、8/21、9/4、9/18、10/2、10/16、11/6、11/20、12/4、12/18

各回:20時〜21時(1時間)

★リアルタイムでなくてもアーカイブでもご受講いただけます

受講料1回¥3,300

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https://thelema-s.com/online240221.html

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