「運命の車輪」 フォルトゥナからスフィンクスへ

エドワード・バーン=ジョーンズ『運命の車輪』1877-1883年 オルセー美術館

目を閉じて左手にいるのは、運命の女神フォルトゥナ。運命の車輪につながれているのは、上から奴隷、王、詩人だとか。奴隷が王の頭を踏んでいる。

人間だと生々しいですねぇ。マルセイユ版タロットの「運命の車輪」だとヘンテコな動物だから笑えるけど。

マルセイユ版だと王冠を被ったものが頂点にいますが、今がどうでも輪が回されたら上下は変わる。運命の女神の気まぐれで浮き沈みするのが人生。

上の絵を描いた画家エドワード・バーン=ジョーンズは『運命の車輪』を何枚も描いたようで、少なくとも7バージョン見つかっているとか。よほど追求したい主題だったのでしょうか。

で、その一つは「愛の勝利」という連作の中のもの。4枚続きの絵で、まず「運命の車輪」の女神フォルトゥナが「名誉」に屈し、「名誉」は「忘却」に打ち負かされ、最後に「愛」に打ち負かされて終わりという。

タロットの元というペトラルカの『トリオンフィ』みたいじゃないですか?でも順番と数が違うな。『トリオンフィ』では「愛」「純潔」「死」「名声」「時」「永遠」の順に負かされていく。

『トリオンフィ』で真っ先に倒された愛を、バーン・ジョーンズは最後の勝利者にしている。強弱の逆転が運命の輪っぽい。『トリオンフィ』にない「運命の車輪」をもってきて一番先に打ち負かしてるのはなんなんだろう。画家個人の考えなのか、14世紀と19世紀末で世の中全体の価値観が変わったのか。

20世紀のウェイト=スミス・タロット「運命の車輪」には、もはや不条理な運命の女神はいない。鎮座するのはスフィンクス。

エリファス・レヴィの影響あり、生命の木との対応あり、神秘主義者ウェイトの考えあり、で描き変えられたカード、マルセイユ版とは違うメッセージがある。

タロット500年の歴史の中で、受け継がれてきたものもあるし、変わったものもある。そりゃそうですよね。文化、常識、人々の生き方が変わってきてるのだから。

ましてや作者がいるタロットは、どういう意味を持たせるためにそう描いたのか、作者の意図を紐解いていくのがおもしろい。

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占い用の大アルカナ講座は他の教室さんでもたくさんありますが、図像の変遷とともに3つのメジャー・タロットを同時に学ぶのは他にないと思うんですよね。

トートが気になる方にもおすすめなのです。ウェイト版と見比べながら学ぶので、ウェイト版をちょっとかじってる方だったら、難解と言われるトートにも取り組みやすい気がしますよ。

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