【運命の車輪】レポ「ウェイト版」と「トート・タロット」と「マルセイユ版」の絵を比較しながら学ぶカードの意味11回目2024/7/17

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11回目「運命の車輪」

マルセイユ版はわかりやすい風刺画です。

マルセイユ版よりもっと前のタロット↓には真ん中に運命の女神

The Wheel of Fortune, Visconti-Sforza Tarot Deck 15世紀
(輪を支えてるかのようなおじいさんはなんだろ?)

目隠しして何も見ずに輪っかを回してる。「恋人たち」のクピドが放ってた矢と同じく、適当なんですね。

のぼりつめた!と有頂天になっても、輪が回されればまた下へ。この輪っかにしがみついてる限り、変わらない。

その愚かさを表すために、鈍そうな生き物が描かれてるんですかね。

セバスチャン・ブラント(1494年)の「阿呆線」の挿絵。「Wheel of fortune(運命の気まぐれ)」 Albrecht Dürer 1494年ごろ

タロット大全―歴史から図像まで』p.488.〜、『リーディング・ザ・タロット -大アルカナの実践とマルセイユ・タロットのイコノグラフィー-』p.230.〜もごらんください。

ウェイト版とトート・タロットでは神話上の生き物に変わっています。スフィンクス、テュフォン、ヘルマヌビス(あるいはアヌビス?)

8回目「戦車」と同じく、エリファス・レヴィのエジプト風を引き継いでいます。下はレヴィが描いた「運命の車輪」、似てますね。

“The Tenth Key of Tarot” is taken from the book by Eliphas Levi, La Clef des grands mysteres. 1846

エリファス・レヴィが描いたタロットは3枚だけ(戦車、運命の車輪、悪魔)だそうです。もし22枚ぜんぶ描いてたら、ウェイト版の他の大アルカナもレヴィ風になってたんでしょうか??

でも文章では書いてたんですね、タロットカードの絵はこうすべきだと。タロット本ではなく魔術書『高等魔術の教理と祭儀』(教理篇)『高等魔術の教理と祭儀』 (祭儀篇) で。

この本の内容が、昔々のおまじない的なものなら、ウェイトやクロウリーもスルーしたはず。科学や技術が発展してる時代にも耐えうるものだったから、フォロワーが続出したのでしょう。

レヴィ以来の近代魔術で大事なのは意志と想像力なんですと。現実は自分次第で変えられる、ポジティブ・シンキングのようなものなら現代人にもフィットしますね。

そこでタロットです。レヴィの考えでは「タロットには森羅万象すべてが書かれている」、究極の書タロットを使って魔術を進めていくのが上の魔術本みたい。

「万物の鍵タロットを読み解けば、すべての謎が解ける」

その謎を守っているというスフィンクスが描かれているのが「運命の車輪」、つまり謎は残るのか?人間には解き明かせないものがある?

トートの書』には「計算できない因子」=巡り合わせ(luck)の要素があると書かれています。現実に起こる出来事には、たまたま、偶然としか言えないことがある、科学で因果関係を説明できることばかりじゃない。

それでも人は「なぜ?」を説明するものが欲しくなる、だからオカルトは廃れないんですね。

クロウリーによると、運命を読み解きたければ現実世界を作り出す3つの要素を理解することだそうです。インド思想の元素的な三つを軸に、錬金術、古代エジプト、古代ギリシャの神話の生き物を全部乗せしてますが、で、どういうこと?私は読んでもわかりませんでした。

(トートの右下の生き物:冥界繋がりでギリシャのヘルメスとエジプトのアヌビスが合体したヘルマヌビス)

Hermanubis marble statue, 1st–2nd century AD

錬金術といえば、ウェイト版にも車輪の内側の円に錬金術マークが描かれてますが(『シークレット・オブ・ザ・タロット 世界で最も有名なタロットの謎と真実』P.149.もごらんください)

カトリックで神秘主義者ウェイトのカードでは、錬金術記号よりも神の名テトラグラマトンが記されてるのに注目です。なんでこんな目にあったの?神はなぜこんな仕打ちをするの?神の真意は?

ところが、カバラを作ったのは、神の仕打ちや神の恵みというのを信じないユダヤ教徒の一部の人たちだということ。

現象は神が与えてるんじゃない、ただ起こっているだけ。災害が起きるのも、作物が実るのも、別に人間のためじゃない。人間にとって良いことも悪いことも、ただ起こっているだけ。

人間中心、自己中心から離れていくのが木星の寛大さってことですか(木星はこのパスの占星術対応)

木星=幸運でもない。木星の神ゼウスは天空から雷を落としたりもしますね(トート・タロットには雷が描かれてます)

現実を作り出してる要素をインドから引っ張ってたトートに対して、ウェイト版では西洋の四元素ですかね(四隅に描かれた4つの生き物は占星術の獅子座・水瓶座・蠍座・牡牛座、火・空気・水・土の象徴)。

で「世界」のカードにも同じように4つの生き物が描かれてます。現実の出来事は偶然に起きるという「運命の車輪」と、現実世界(セフィラー10)に接する「世界」との関連を持たせてるのなるほどです。

出来事はたまたまだし、人間にはどうしようもないなら、ただ運を天にまかす?それではマルセイユ版の車輪にとどまるようなものかも。意志と想像力で変えられる部分は変えていけばいいですよね。近代魔術方式で。

以前の講座の「運命の車輪」レポ

いつも隔週開催ですが、7/31はお休みです。次回は8/7「正義」、少し先になりますがまたお待ちしてます。

伊泉龍一先生のタロット講座「ウェイト版」と「トート・タロット」と「マルセイユ版」の絵を比較しながら学ぶカードの意味

講師:伊泉龍一先生

Zoom開催スケジュール

次回8/7「正義」、以降8/21、9/4、9/18、10/2、10/16、11/6、11/20、12/4、12/18

各回:20時〜21時(1時間)

★リアルタイムでなくてもアーカイブでもご受講いただけます

受講料1回¥3,300

詳細・お申し込みはこちらから
https://thelema-s.com/online240221.html

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