読了『ハーバード・サイケデリック・クラブ―ティモシー・リアリー、ラム・ダス、ヒューストン・スミス、アンドルー・ワイルは、いかにして50年代に終止符を打ち、新たな時代を先導したのか?』

伊泉先生の最新の翻訳書

ジェファーソン・エアプレインにはなんの思い入れもないのだけど、サイケデリックな絵柄が身近でこれしか見当たらなかったので

占いの本ではないのだけど、まったく関係ないわけでもないか。

MyCalendar (マイカレンダー) 2020年10月号をお持ちでしたら、伊泉先生の記事”タロットの文化史〜1960年代、カウンター・カルチャーの中のタロット〜を読んでみてください。

あるいは「ユリイカ 2021年12月臨時増刊号 総特集◎タロットの世界」のp.142.〜の伊泉先生の記事「水瓶座時代のタロットとポップ・オカルティズム」で。

今の占いのあり方ーー未来の予言じゃなくて自己変容や自己成長のためにタロットや占星術を使っていくーーの元をたどっていくと、60年代のこの人たちに行き着くみたい。

そこまで追いたい人ばかりじゃないと思いますが、私は興味がありました。彼らがやろうとしていた「意識の拡張」というのに。

意識の制約からの解放って、いったいどんな状態?

本にはマジック・マッシュルームやLSDによって神秘体験をした人の話がたくさん書かれています。それが圧倒的な体験だったのはわかるのですが、具体的にどんなのかは文章を読むだけではよくわからない。文中でも”体験しないとわからない”とあります。知性には限界がある、生命の木の上のほうに似てる。

理性偏重かつキリスト教文化の西洋人にとっては、より衝撃的だったんだろうと想像します。それまでの心理学手法、行動分析や精神分析よりも瞬時に人を変えることができる可能性を感じたのはわかる。

だけども、体験がすべてで言語化できないなら科学じゃない、ハーバード大学での心理学研究にふさわしくないと批判が出たのもわかります。そういう権威に反逆した人物が、「わかる」者だけと集っていれば、カルトのようにもなっていく、そりゃ問題ですよね。そもそもドラッグは毒にもなるわけだし。

それでもフォロワーやパトロンが絶えなかったのは、LSDによって、宗教的な修行をせずとも”即時の涅槃”に辿り着けたからでしょうか。険しい山を登りきってようやく見える景色を、ドローンが一瞬で見せてくれるみたいな?

最盛期の盛り上がりは、まさにデュオニソスの祭りだし、皆で夢を見てたのも海王星的。「人々が愛でつながる」集団幻想。

「決まった生き方に適応しなくても、別の生き方もあるんじゃないか?現状維持じゃなく、人生を変えよう」旧来のシステムを超えていこうとするのは天王星的。

愛、変革、言ってることはいいんだけど、じゃあどうするの?具体的なヴィジョンがなかったから、人々は迷宮にはまってしまったのか(数秘の5はあるけど6がない、みたいな)。

以前ブログで書いた映画『ラスベガスをやっつけろ』(1998年)では、ジャーナリストがティモシー・リアリーにのせられたことをぼやくシーンがあります。

この本のタイトルにある4人のうち3人は、後年、ドラッグじゃないやり方で、より良く生きる方法を見つけようとします。瞑想、ボディ・マインド・スピリットのホリスティック医療、宗教じゃないけどスピリチュアルな生き方、これらは21世紀の今に続いてますね。

60年代には世界を揺るがせただけだったとしても、その後何十年も彼らの影響が残っているのだから大きな足跡を残したんだなと思います。

近年は精神的な治療に使うためにマジックマッシュルームも見直されているようですし。

本は物語仕立てで、嫉妬、裏切り、脱獄、逃避行、謎の大富豪などなど連続ドラマのようで、ページがどんどん進みました。

それにしてもティモシー・リアリーはぶっ飛びすぎ。ほかの3人は葛藤したり、人間らしい悩みも見せるんだけど、ティモシーだけはいつでも我が道をいききってた。どういう鋼メンタルなのか、これこそ研究してほしい。

コメント