ルーブル美術館展 愛を描く

ヨーロッパ文化の源流、古代ギリシャ・ローマとキリスト教。今回の展覧会でも、神話画、宗教画が充実してて、タロットや占星術で出てくるあれこれが見られておもしろかった!

愛人アレス(火星)とベッドにいるヴィーナス(金星)が夫ウルカヌスに見つかったところ、羊飼いに恋したディアナ(月/射手座)、ニンフを追いかけるパーン(山羊座)、アポロン(太陽)のBL的なシーンなどなど

(神話を少々は知ってるほうが楽しめる展示ではある。混み混みの会場であちこちから「なにか全然わからん」て声が聞こえてたのを思うと)

愛がテーマだけに、たくさん登場してたのは、愛と美の女神ヴィーナスとその息子で愛の矢をもつアモル(エロス/クピド)、とくにアモル。

展覧会の顔の下の絵は、エロスの矢が刺さった瞬間の、愛の誕生を描いてるとか。

フランソワ・ブーシェ《アモルの標的》1758年

どうしようもなく恋焦がれるって不思議なものですね。自分でコントロールできないのを、昔の人は神のせいにしたんでしょうか。愛の神エロス(クピド/アモル)の矢に射られたら恋に落ちちゃう。なんとしても相手を手に入れたくなる(ギリシャ神話の神は狙った相手をすぐ誘拐しますよね)

欲望にストレートな古代ギリシャに対して、キリスト教は禁欲的。人類最初の夫婦アダムとエバの結びつきに、エロス(クピド)の矢に撃たれるようなドラマはない。道徳が問われる二人。

キリスト教では、聖母子、聖家族の親子愛が描かれます。恋愛と違って、与える愛、無償の愛、自分を犠牲にする愛。神の愛、神への愛も。

聖母子やピエタは『神話で読み解く占星術の12星座の物語』講座の乙女座、魚座で出てきたのを思い出す。

17世紀くらいからは現実の人間の愛憎も描かれてます。宗教改革や市民革命をへて、人々の生活も考え方も変わっていく中で、愛の表現もまた変化してくさまが見られました。

寓意もおもしろいです。

たとえば鳥。若い女性が鳥籠を持つ図像は「恋のとりこになっている」こと。飛び立つ鳥は失恋、鳥の死は処女喪失のメタファーとか。

ルノルマンの「鳥」はさえずりから”おしゃべり、コミュニケーション”の意味、なにげなく喋ってるうちに気心知れて恋が生まれるのもあるか。

話をアモル(エロス)に戻すと、ぷくぷくした幼児の姿で描かれることが多いですけど、成長して自身が恋をする神話もまたいいのよね。

フランソワ・ジェラール《アモルとプシュケ》、または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》1798年

王女プシュケの美しさは美の女神アフロディーテ(ヴィーナス)が嫉妬するほど。ヴィーナスの策略で醜い怪物に嫁がせられるところが、息子エロス(アモル)が愛の矢を自分に刺して、プシュケに恋してしまう。母ヴィーナスはプシュケに無理難題を課して全力で邪魔をする。それでも試練を乗り越えて、最後は結ばれる。

フランソワ・ブーシェ《プシュケとアモルの結婚》1744年

結婚の女神ヘラ(ユノ)が取り仕切ってます。それに対して母アフロディーテ(ヴィーナス)は顔を背けてるという。。

王女の美しさを妬む義母、試練中に動物などに助けられる、王子様が助けに来る、など白雪姫なんかの童話にも似て、普遍的なストーリーなのかも。また魂(プシュケ)と愛(エロス)がお互いを探し求めるとか、年長者からの抑圧を乗り越えて成長するとかはユング派好みでしょう。

神話で読み解く占星術の12星座の物語』の天秤座回、『神話で本格的に学ぶ現代占星術―惑星編』の金星回でも出てきた神話。

テキスト本『占星術と神々の物語 ーホロスコープの中の元型』にも。

ルーヴル美術館展 愛を描く、京都市京セラ美術館で2023年9月24日まで

ルーヴル美術館展 愛を描く|読売テレビ
ルーヴルが誇る珠玉の“愛”の絵画が一堂に!『ルーヴル美術館展 愛を描く』2023年6月27日〜9月24日まで京都市京セラ美術館にて開催。

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