臨床心理学の博士号をとった著者は、いざ就職するにあたり、周りが勧める大学教員でも研究員でもなく、カウンセリング経験を積める現場を求めました。
向かった先は、精神疾患の人たちの居場所型デイケア。「セラピー」の専門家を目指して働き始めたものの、そこでは「ケア」という関わり方が圧倒的だった、その体験がドラマ仕立て(?)で書かれています。
ケアとセラピー、アプローチの仕方が違うんですね。
ケアは傷つけない。ニーズを満たし、支え、依存を引き受ける。そうすることで、安全を確保し、生存を可能にする。平衡を取り戻し、日常を支える。
セラピーは傷つきに向き合う。ニーズの変更のために、介入し、自立を目指す。すると、人は非日常のなかで葛藤し、そして成長する。
居るのはつらいよP276
たとえば「大丈夫だよ」と言ってもらえないと安心できない人に「大丈夫だよ」と言ってあげるのか、「大丈夫だよ」と言ってもらえないと不安なのはなぜだろう?を考えてみる方向へ促すのか。
どっちがいい/悪いではなくて、水と油でもなくて、ケースバイケースでどっちもありなんですよね。
辛さMAXのときに、いきなり問題の根本に向き合うのは無理、まずは「うんうん、わかるよ」てケアしてもらいたい。でも「これでは堂々めぐりだな」とはっとする日が来たらセラピーの出番だったり。
ケアとセラピーは「配分」で、人との関わりでどっちの成分を多めにするか、その都度決めていくもの、だと。
私もセラピストの端くれですから、実感あります。セッション中に心の蓋が開いて、クライアントさんご自身で気づいていかれるのはセラピーの醍醐味。でも、そのタイミングじゃない人はケア的に聴くほうがいい。その時のその人次第です。
占いだったら
20世紀後半からの英米のタロット・リーディングとして教わってるのは、ここでいうセラピー寄りですよね。聞きたい答えをストレートにもらうんじゃなく、自分の内側を見つめて自己変容と自己成長を目指す…
寄り添い系、励まし系なら、ケア成分が多めになるのかな。願望実現系はどうだろう?
もともとの性質や好み、得意不得意もあると思うんですけどね。ふたつのアプローチ法を、いい配分で使えたらなって思いました。
著者の東畑開人さんは鏡リュウジさんとのジョイント講座もされてます。
コメント